鈴木つねおと「みんなで創る藤沢の会」が考える防災計画
ここでは鈴木つねおと「みんなで創る藤沢の会」が考えた防災計画をご説明します。
「みんなで創る藤沢の会」では鈴木つねおをふくめ、多くの人間が現地に何度も足を運び、様々な情報を集め分析して、新しい形の防災計画を練りました。
楽しいことだけを考えるのも良いのですが、行政の話をするる以上、その使命である「市民の命と財産を守る」という面もきちんと考えねばなりません。防災計画についてもお話ししましょう。
現在の藤沢市の防災計画は全然進んでいないと判断しています。
それは「現状の防災計画がそもそも『災害時』に関してのみであり、東日本大震災で起こった様々な事に対する教訓を生かしていない」という点が一つ。もう一つはそのアクションが「避難ビルの指定数では神奈川で一番進んでいるが、果たしてそこに何人が避難できて、それは一人あたりどれだけのスペースがどの高さに用意されるのか、きちんと告知されていない」レベルでしかないことです。これらを総合して「市民の不安に答えられていない」=「防災計画は全然進んでいない」と考えます。
鈴木つねおと「みんなで創る藤沢の会」の防災計画では、内容を「災害時」と「災害前後」に分けて考えます。
災害時の対応
まず災害時に対応するのが「ふじさわ災害ナビ」です。ふじさわ災害ナビは災害を「地震・津波・原子力・その他の生活基盤を破壊する災害(疾病など)」に分けて、それぞれの家庭が、どのように避難を含む行動をしたら良いかを、具体的に指示した冊子です。
たとえば津波時の避難場所や避難ビルであれば、各戸ごとに目標が違う訳ですが、これを各戸別にオーダーメイドしたものを全戸配布します。
しかしこの段階では弱者への対応ができておりません。全戸配布のデータを作る段階で個人情報を過度に利用するのは適切でないと考え、機械的に自宅や店舗の場所と避難場所の結び付けを行います。
家庭内に弱者がいる方には、自己申告で市役所に問い合わせして頂き、それぞれの状況に応じたオーダーメイドバージョンの「ふじさわ災害ナビ」を受け取って頂くか、インターネットで条件を入力することで、自分で自分に合ったものが出力する事ができます。これらの方のへの告知は、支援等の家庭で市役所に関係がある場合は市役所の窓口を通じて行い、また病院などでも啓蒙活動をお願いします。もし市民のコンセンサスが得られれば、より能動的に動ける体制まで構築したいと考えています。
どういった方を弱者と呼ぶかというと、ここでは「正常な社会インフラや流通システムが機能していないと生活しづらい方」とします。
たとえばアレルギー体質者を例に挙げれば、東日本大震災ではアレルギー体質の子供が避難所に避難したとき、体質に支障のある食べ物を提供されたが、断ったり交換したりする雰囲気ではなかったため、無理に食べてアレルギー症状を起こしたという例がありました。このような例に対しても、ふじさわ災害ナビ作成において対象者の率を把握することで、避難所での初期の備蓄食糧に適切な量のアレルギー体質者用食料を用意します。
そしてアレルギー体質の方々だけでなく、入院患者は当然のこと、人工透析のように継続的に医療活動が必要な方、障がい者、アルツハイマー症などの方々、そして乳幼児を含めた社会的弱者は、次項の「藤沢災害対策モデル」で説明しますが、被災時に現地に留まらず、いち早く正常な社会システムが機能しているエリアに域外退避させる計画であり、そういった事もオーダーメイドの「ふじさわ災害ナビ」には記述されます。
一方、たとえば自宅から駅前に買い物に出ている場合は、自宅用の「ふじさわ災害ナビ」はつかえません。その為に「スマートフォンバージョンのふじさわ災害ナビ」も作成し、現在いる場所を基点とした避難情報の提供を行います。すべての方々がスマートフォンを使える訳ではないので、災害時にはスマートフォンにあらかじめこのアプリをダウンロードしていらっしゃった方に、リーダー的行動を取ってもらえるよう、各地区での防災教育などを行っていきます。
スマートフォンは災害時に通信システムがダウンしたりすると使えないと思われがちですが、それはあくまでもインターネットからデータを取得する場合であり、今回のようにあらかじめ定期的に必要なデータをダウンロードするアプリの場合は、通信ステムがダウンしていても本体のGPS機能だけでナビゲーションも利用可能となります。ご安心下さい。
次に災害「時」の対応の具体的行動です。これについては、津波が最も災害規模が大きく重要にとなると考え、まずこれを基軸に計画しました。
事前に行った市民アンケートでの「藤沢の津波対策としてふさわしいのは?」というご質問に対しては、浸水予測地域、非浸水予測地域を問わず、8〜9割の方が、「巨大堤防を築くより、適切な避難計画と復興への備えがあれば、水に親しむ環境を残した方が良い」と答えており、また藤沢地区を巨大堤防で囲むは非現実的と考え、まず避難場所の確保と、東日本大震災で見られた問題点に関して、備えられるものは事前に準備して備えるという考えで望みます。
避難計画は単に人数割での避難場所の確保だけでなく、その場所で一体高さ何メーターで何人が一人あたり何平方メートルのエリアを割り当てられ避難をできるのか。果たしてその場所は最悪余震による津波が収まるまで雨風をしのげるのか、食べるものはあるのか等を、実際の災害規模に応じて検証して組み立てます。
ただし、その後に関しては従来の防災計画とは異なります。
首都圏で地震や津波災害が起こった場合、従来型の「被災者は現地に留まって、支援物資を運び込む」システムは破綻すると考えています。それは首都で災害が起こることで中枢機能が破壊される事も考えられますが、たとえ残っても、被災者が多すぎて従来の外から物資を運び込む援助が間に合わないことも考えられるからです。
基本的に社会的弱者は、事前に災害協定を結んだ「同種の災害に同時に被災しないと想定される自治体」=「正常に社会基盤が機能しているエリア」に退避させ、次いで状況に応じ「子供達と保護者」を中心に、仮設住宅が整備されるまで同種の退避を行わせます。被災後がれき撤去などの復旧作業に従事できない人員は極力同様に被災域外退避させる事で、現地での混乱、疫病の発生、糞尿の処理、ストレスによるトラブル、そして最悪の場合食料の配給が間に合わないことによる餓死などを防ぎます。
弱者避難に関しては事前に鉄道会社・バス会社などと協定を結び、多量の人員をなるべく早く域外に逃がす事ができるように準備します。逆に市民にはそういった移動手段が提供される場所を数段階に分けて設定しておき、そこを目指すような指示を「ふじさわ災害ナビ」に盛り込みます。
原子力災害についても同様です。SPEEDIなどの情報が公開されない場合、避難するべきか否かの判断を、誰がどう下すのかなど研究が必要ですが、危ないと判断された場合、自分で移動する、或いは行政として移動手段を提供するなどで、被災が予測される地域外への避難計画を練って「どこを目指せばいいか」をきちんと指し示し、市民の安全を守り、不安を解消します。
一方疫病のパンデミック、火山の噴火他などはまだ具体的な計画が策定されておりませんので、市民が納得できる計画を研究、策定します。
これらの策定に重要なのは「たとえ備えが空振りに終わっても、市民が不安になる事態まで含めてが災害であり、市民の不安の解消に努める」事だと考えています。
災害前と災害後に関する準備
次に災害前と災害後に関しての計画です。
今回の東日本大震災で問題となったのは、
・「様々な想定外があったこと」
・「国をあてにしていると即応体制が取れない事」
・「災害時において行政の使命である『市民の命と財産を守る』が果たされていない事」
だと考えます。
つまり、市でできる事は可能な限り市がイニシアチブを取って動き、また市民の命や財産が守られないのであれば、それに対して市が市民の立場に立ち異論を唱えるべきであるという事です。もし県や国の計画があっても、それは二重三重に備えるという意味で肯定的にとらえ、市は市として市民の「命と財産を守る」ことに責任を負うと考え行動します。
まず「想定外の事態」に関しては、可能な限りのシミュレーションを行い、またそれに基づいた災害の啓蒙活動を行っていきます。
たとえば最近では平塚市が東海大学に依頼して、実際の津波浸水状況をCGで映像化して検証しました。これは「人間の頭」で考えるのではなく、時には感情に左右されない「計算」でのみ結果を示すことで、別の方向から災害に光をあて、予測される被害をあぶり出すという行為です。CGではあっても見慣れた日常の環境に津波が押し寄せてくる画像は、検証以外にも啓蒙として役立ちます。
同じように、多数の人間が問題点を考えるにしても、全く異なる分野の人材による検証、また必要に応じて市民からアンケートを採る形で気になった事項を採取、東日本大震災被災地域でのヒアリング、あるいは古文書、史跡の検証も含めその検証に役立てます。
次に「被災時の即応体制」に関してですが、「みんなで創る藤沢の会」のアンケートでも50%以上の方が賛成した「津波被災時に労働可能者はがれき撤去などの作業に雇用。とりあえず収入を確保」や「災害時に必要な復旧用の重機などに関し、事前に補償や事故保険の取り決めをして、災害時に即座に作業を開始する」などは最優先で取り組もうと考えます。
被災者のうち域外避難をしなかった人員に関しては、復旧作業に雇い入れる事で失業による収入の途絶を防ぐルールを作り、災害後すぐに復旧を開始できるよう、必要になる機器の事前契約や保険契約、そのときの補償の取り決めなどは、市内建設業業者などを中心に交渉を進めます。また今回の災害時に役に立ったハイブリッド車による電源供給、発電機の拠出、キャンピングカーの拠出、或いはボランティアの受け入れ体制のルール作りなども行います。
最後は災害後に『市民の命と財産を守る』ことに関してです。
その一つ目は「命を守る」点です。
災害後の命を守ることは、災害後の生活が安心して送れるよう準備する事にあります。
先ほども述べましたが、被災者のうち弱者を早急に被災域外に退避させ、その次の段階としては、小中学生、およびその保護者を仮設住宅の建設時まで被災域外退避させる事を考えます。
もし首都圏が直下型地震に襲われ津波も発生した場合を想定すると、藤沢市では少なくとも10万人が被災民となります。10万人が被災したとするとその仮設住宅の用地確保やインフラの整備も単年度では済まないかもしれません。用地か確保できたとしても首都圏全域で仮設住宅を建設することになったとすると、その過密度から建設ペースは東日本大震災よりもはるかにかかると思われるからです。
その間数年にわたる避難所での避難生活は、文字通り避難民の命を脅かします。ですから小中学生は学区単位で域外避難し、正常な社会インフラが機能しているところで、みずからのコミュニティを崩さない形で生活を送れることを目指します。そうすることで、被災地は復旧に特化することができ、より素早く復旧から復興の段階へ進むことができるからです。
また災害時の安否確認のシステムが、過去の阪神淡路大震災からあまり進化できなかった点は反省し、避難場所の自立型太陽光発電や発電機、拠出されるハイブリッド車の電源などを利用、電話回線ダウンに左右されないアマチュア無線によるパケット通信でインターネット接続、安否確認と避難所の避難所人員むけ必要物資要求情報伝達を管理するサーバーを国内外複数箇所に準備、そこに対してスマートフォンやタブレット端末を接続することで、スムーズな安否確認と物流を実現する「安否確認・支援物資管理システム」を構築します。特に安否確認は「どこまでを誰に提供するか」を管理できる体制を整え、災害に乗じた不必要な個人情報の漏洩にも気を配ります。
先の災害時の計画にも述べたように、基本的には弱者は被災域外退避する計画ですが、何らかの理由で現地に残らなければならなかった場合の、これらのシステムがあれば適切な食料の入手も可能となります。また今回の震災であった女性用下着などの必要な物資が届かない、送る側は必要な物資が何であるか分からないというミスマッチングを防ぐ事で、災害後の生活を守ります。
災害で図らずも命を落とされた方の情報も、無くなったのか否かの情報、或いはどちらにいらっしゃるのか、ご葬儀などの情報も、ご遺族の意向に応じて提供できるようにします。
ついで「市民の財産を守る」点です。
「市政と防災に関するアンケート」30%の方が賛成した、「浸水地域は全戸保険加入」に関しては、「そんな保険あるわけ無い」「高いんじゃないの?」「補償額は家の価値分しかなく建て替えられないんじゃないの?」という声が少なからずありました。
これは従来の「家屋の原価償却額に対する割合で支給される津波保険」ではなく、「津波で家を流された場合には新築を建て直せるお金を払う津波保険(*JAの保険や東京海上の「超保険」など実在する)」のことを示しており、うまく説明でき無かった故に回答が低かったと感じます。たしかに従来の津波保険よりも高いのですが、戸数を集めることでより低い金額で契約可能かどうかを模索します。
そして現在、一度津波に洗われた地域は「自宅再建不可」という指定を受けており、土地の資産価値が著しく低下しています。かといって行政が同等の価格の代替え地を提供してくれるわけではありません。ただ今後、阪神淡路大震災後に「地震に強い家」が生まれ、その結果、今回の大震災被災地域でも、津波に流されなかった地域は家の倒壊数が少ないという事実に鑑み、建築基準として「津波に強い家」が定められるのであれば、その基準を満たしたら一度浸水した地域であっても自宅を再建出来るという前例を作るべく、県・国に働きかけて参ります。
こういった家の場合、家の躯体(くたい:建物の主要な構造体のこと)はコンクリートでかなり深いくい打ちは必要となりますが、津波が来ても流されるのは家の中のものだけで家そのものは残るため、再建するにしてもリフォームに近い金額で済むという事になります。たとえは悪いですが、床上浸水した地域でも家が流されなければ、建て直さないで復旧するのと同じ理屈です。
つまり、「津波が来たら適切に避難して命は守り、余震が心配される数年は仮設で過ごし、期間が経ったら元の場所にまた住める」という「減災モデル」を想定しています。そうすることで、アンケートにあった「適切な避難計画と復旧復興への備えがあれば、海に親しむ環境を残した方が良い」というお答えを満たします。
自然の力はどうやっても防ぐ事はできません。仮に東日本大震災クラスの津波を防げる堤防を整備しようとしても完成には何十年もかかりますし、整備したら整備したで、海岸地域の景観も代わり、また別の意味で資産価値が低下します。そしてそういった堤防を築いても「絶対に防げる」とは言えないのが現実です。
ですからせめて、「自然には勝てない。だから津波が来たら命は守る。そして時間が経ったらまた新しい街を作ろう!」という気持ちになれる環境を作ることが、藤沢市という地域にあった行政の使命の果たし方であると考えます。
そのためには、津波時に大切な思い出の品、有価証券や通帳が入った金庫が流されてしまった、という問題に対する対策としてのアンケートの2番にあった、「非浸水地域に公共貸金庫を作り、予備の通帳やカード・証券、アルバムなどを預けられる」という案をぜひご検討頂きたいと思います。或いは行政により各戸地中防水保管スペース設置への補助という考えなど、皆様からのご提案もお待ちしております。
これらがそろって、命も、財産も、資産価値も、そして建て替え資金も確保されるとしたら、津波に対する不安感もだいぶ和らぐのでは無いでしょうか?
ここでは津波災害に対してのみ述べましたが、このように広い範囲にわたって災害に対して備えるのが「藤沢災害対策モデル」であり、それは地震であっても原子力災害であっても変わりません。
そしてこれらをすべて読んで頂いた上で、実は「たいしてお金がかかる事を言ってはいない」「やろうと思えばすぐにできる事」という点に着目して頂きたいと思います。
主たる事は交渉とルール作りであり、特に災害に関しては、やろうと思えば市政は過去10ヶ月間に充分アクションを起こせたはずであることを認識して頂きたいと思います。なのに何もできなかったのです。
お金をかけずとも市民パワーで藤沢の未来は開けますし、鈴木つねおと「みんなで創る藤沢の会」はフットワーク軽く皆様の「命と財産」を守る藤沢市の実現を目指します。